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オフィシャルライター本田好伸の所信表明

TURN THE PAGE

フウガは、このままでいいのか?

この数年、そんな思いが僕の頭を駆け巡っていました。

「このまま」というのは漠然としたもので、“外の人間”として感じていた抽象的な感覚です。

2014年のFリーグ参入以降、トップカテゴリーを筆頭に、育成年代の各カテゴリーにおける環境整備が加速して、着々とクラブ力が増してきたことは間違いありません。6シーズン中4回もプレーオフに出場し、今年1月には、終盤戦の奇跡的な巻き返しによってプレーオフ準決勝に勝ち上がりました。結果という視点で考えても、順調に進んできたと思います。ただ、何か空気感が違う。

どこかフウガらしくない印象を拭えずにいました。

「フウガ・イズム」と呼ばれるクラブスピリッツに変化が起きているような感覚。周囲からも、血が薄まっているのではないかという声が、聞こえ始めていました。しかし、その理由がよくわからない。

ピッチでは、選手が「切り替えゼロ秒」を体現し続け、ファン・サポーターはそうした姿に心を動かされ、エールをさらに強めていく。Fリーグでは間違いなく上位の人気を獲得していると思います。では、僕が感じている気持ちの正体とは何なのか、停滞感にも似た感覚を覚えるのは、なぜなのか。

一つの仮説を立てました。

それは、パッションの質が変化しているのではないか、というものです。

2000年の創設から今年で20年目を迎えるフウガドールすみだは今、第二章と第三章の狭間の過渡期を迎えています。創設から2009年の全日本選手権優勝までを第一章、そこからFリーグに参入して、“ミスター・フウガ”太見寿人が引退した2016シーズンまでを第二章と仮定すると、第三章に突入しているはずのこの3シーズンのスタンスが揺れています。

ただひたすら、自分たちが楽しむことだけを目的に、強い相手と真剣勝負をするために戦い続けてきた時期を終えて、フウガは「誰かのために」というフェーズに移行しました。墨田区と出会い、地域に愛されるクラブを目指し始めた彼らは、ある意味では、背負うものを作ってしまいました。

もちろん、トップリーグを戦うクラブとして、それはとても大事なことです。しかし、一つ間違えれば、言い訳を用意してしまうことを意味します。誰かのためにではなく、すべては「自分のために」がスタートだったはずです。フウガとは常に自分に矢印を向け続けられる人が集まっていたからこそ、強かった。そう考えたときに、背負うものが大きくなり、ガムシャラに突き進みづらくなった弊害が、あるのかもしれません。

これは、あくまでも仮説の話です。答えはなく、根拠もありません。

だから僕は、その根底を探りたいと思っています。これまで、チームを支え、フウガをフウガらしくしてきたパッションは今、どこにあり、どんな色をしているのか。その真実を見つけたい。

フウガ・イズムが変わってしまったのか、変わっていないのか。薄まったのか、薄まっていないのか。おそらく、今のフウガを生きる人それぞれが異なる解釈を持っているはずです。人の考え方、価値観は千差万別であり、夢や目標、モチベーションはみんな違います。ただ一方で、フウガというクラブは、奇跡的なバランスで全員が同じ方向を見つめて、最高の一体感を生み出す瞬間がある。須賀雄大監督が「ヒューマンパワー」と表現したその特異な力の正体と、根底にあるはずのパッションを探っていきたいと思います。

2008年にフウガを初めて取材してから12年。フットサル専門誌の編集者時代から僕は、このクラブの移り変わりを見てきました。その時々で彼らは、フットサルを通して、多くの人々を感動させてきました。だからこそ何かを期待してしまう。もっと、もっとフウガには、アツいものを見せてもらいたい、と。

きっと、フウガのファン・サポーターのなかには、Fリーグ参入後から応援を始めた人もいるでしょう。そして、そういう人であっても、2009年の伝説は知っていることでしょう。でも、彼らはそんなもんじゃなかった。選手権で勝ち上がる勢いはすさまじかったですが、彼らは関東リーグでいつも、アツかった。情熱にあふれ、勝ちたい、うまくなりたい、何よりフットサルが楽しい、そんな気持ちがピッチに充満していました。

そういう、彼らの原点にあるパッションを、多くの人に届けたい。それが、フウガドールすみだのオフィシャルライターを担当させていただく出発点にある想いです。

僕は、須賀語録のなかで、この2つのフレーズが好きです。

「まずは疑え。そして信じろ」

「チーム全員で間違えればそれも正解になることがある」

フウガでは、太見さんが誰よりも須賀監督の言葉を疑っていたそうです。反対の方法を提示して、ぶつかり、その価値に納得すれば、今度は全力で信じる。そうやって、自分で答えを見つけていくスタンスが、フウガの源流です。

と同時に、世間で真逆の風潮があったとしても、信じるものさえブレなければ、自分たちで道を切り開いていけるということ。楽しいことも、辛いことも、すべてを一生懸命、全力でやるからこそ価値を見出せる。誰もやらないからやらないのではなく、誰もやらなくても自分たちがやりたければやる、そういうクラブです。

ここまでは、第二章の話。では、第三章のフウガは、どこへ向かっていくのか。

オフィシャルライターとして、クラブや選手を無条件にほめたたえたり、必要以上にあおるつもりは全くありません。忖度はなしです。僕は、今起きているリアルと、その先に待つ未来と、それらをつなぎ合わせるパッションを見て、聞いて、感じて、クラブを愛する多くの人々に届けたいと思っています。

フウガの情熱が向かう先へ──。一生懸命、向き合っていきます。

フウガドールすみだオフィシャルライター

本田好伸

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本田好伸(ほんだ・よしのぶ)

1984年生まれ、山梨県甲府市出身。日本ジャーナリスト専門学校卒。

フットサルマガジンピヴォ! の編集を経て、2011年からフリーランスに転身。サッカーやフットサル、スポーツを中心に執筆、編集、撮影、デザイン、企画を行う。Football Culture Magazine ROOTS編集長、futsalEDGEメインライター、フットサル全力応援メディアSAL副編集長などを歴任し、Fリーグオフィシャルガイドは2012シーズンから8年連続で編集・執筆を担当。三浦知良が出場したW杯2012年大会、アジア選手権2018年大会を現地取材。2020年3月1日、フウガドールすみだオフィシャルライターに就任。